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Durand 全曲版です。

第1場

ト書き 音楽

神聖な森の端にある牧草地の春の日の午後。前景には三体のニンフの彫像がある洞窟やパン神の形に何となく似ている大きな岩、背景には放牧されている羊の群れが見える。幕が開くと舞台は無人である[p.1]
序奏と宗教的な踊り
イ長調、4分の4拍子。低音の「イ」音の上に5度上の音が積み重ねられてゆく中から、弱音器をつけたホルンと舞台裏の合唱などによる「自然の主題」が提示され、これを背景として、フルートソロによる「ニンフたちの主題」、ホルンソロによる「ダフニスの愛の主題」が続けて提示され、それぞれオーボエのソロ、アルトフルートファゴットのユニゾンで繰り返される。
ニンフへの供え物が入った籠を持ち、若い牧人たちと娘たちが入場する。次第に舞台がいっぱいになる[p.4] 弦楽器に3連符の動きが出て音楽は次第に高まる。「自然の主題」を歌う合唱は次第に近づいてきて、途中から「舞台上で」(Sur la scène)の指示がなされる。
一同はニンフの祭壇に頭を下げ、娘たちは祭壇を花輪で飾る[p.7] 「自然の主題」と「ニンフたちの主題」が結合された最初の ff のクライマックスを迎えた後、音楽は次第に収まり、次の《宗教的な踊り》に切れ目なく続く。
宗教的な踊り
ハープの和音などを伴奏として、二連符と三連符が組み合わされた「宗教的な踊り」の主題がpp で弦楽器に出る[202]。やがてこの主題に「自然の主題」が絡み、トライアングルクロタルが彩りを添える。
ダフニスの登場[p.15-16] オーボエが「ダフニスの愛の主題」を奏でる。
クロエの登場[p.16] フルートが「ダフニスの愛の主題」を奏でる。
「宗教的な踊り」が「自然の主題」とともに高まり、2度目のff によるクライマックスを迎える。
ダフニスとクロエは前景に来て、ニンフ像にぬかずく。踊りは止まる[p.22] ハープのグリッサンドと弦楽器のトリルを背景に、木管楽器が「ダフニスの愛の主題」を奏でる。
合唱(ハミング)による「自然の主題」を背景に、ヴァイオリンソロが「ニンフたちの主題」を奏でる[205]
娘たちはダフニスを引き寄せ、彼を囲んで踊る[p.24] 変イ長調。生き生きと(Vif)したテンポの4分の7拍子(4分の3拍子+2分の2拍子)の踊りが始まる。タンバリンスネアドラムなどによって軽快なリズムが刻まれる。途中でロ長調転調する。
クロエは初めて「嫉妬」というものを感じるが・・・[p.30]
その瞬間、クロエは若者の踊りに引き込まれる。 牛飼いのドルコンは積極的にクロエに迫る[p.30-31]。今度はダフニスが苛々する[p.36] テンポと拍子はそのまま 変ト長調に転調し、新しい旋律が弦楽器に出る。
全員の踊り
7拍子のまま変イ長調に転調し、若者たちや若い娘たちの踊りの様々な要素が「この上もなく優美な対位法により結び合わされる(ジャンケレヴィッチ)[191]」。グロッケンシュピールがここで初めて登場する。
踊りの終わりに、ドルコンはクロエにキスをしたい衝動にかられる。クロエはドルコンに無邪気に頬を寄せている[p.40] 踊りのリズムが収まりテンポが緩やかになる。
ダフニスはドルコンを突き飛ばし[p.41] 低音楽器がf で「クロエの主題」を一瞬予告する。
クロエに優しく近づく[p.41] 「クロエの主題」が弦楽器により、優雅なワルツの形[191]で提示される。
若者たちがクロエの前に立ちふさがり、ゆっくりとダフニスを引き離す[p.42]
若者の一人が、ダフニスとドルコンが踊りで勝負することを提案する。勝利した方には賞としてクロエからのキスが与えられる[p.42-43] 木管楽器によるファンファーレ風の動機に「クロエの主題」の後半の動機が絡む。
ドルコンのグロテスクな踊り[p.43] ドルコンのグロテスクな踊り
4分の2拍子、バスドラムティンパニのリズムに乗ってファゴットがドルコンの踊りを奏で、様々な楽器に受け継がれる。途中、トロンボーンがユーモラスなグリッサンド[215]で合の手を入れる。
群衆はドルコンの動作を真似て茶化し[p.51] ペザンテ(重々しく)で、トロンボーンの合の手を含むフレーズが繰り返される。
笑いによってドルコンの踊りを終わらせる[p.52] 装飾音符を伴った8分音符で群衆の笑い声が表現される。
再びファンファーレ風の音型に「クロエの主題」の後半の動機がからむ。チェレスタアルペジオを弾くと1発のクロタルが響く[218]
ダフニスの優雅で軽やかな踊り[p.54] ダフニスの優雅で軽やかな踊り
ヘ長調、8分の6拍子。ダフニスが優雅に踊る。「ダフニスの踊り」の最初の動機は、この後のリュセイオンが登場するシーンで、ダフニスを表すライトモティーフとしても使用される。
一同は、ダフニスに勝利の報酬を受け取るように促す[p.63] オーボエが「クロエの主題」を奏でる。
そこにドルコンがまたもや名乗り出るが[p.64] バスドラムに導かれるファゴットとヴィオラがドルコンの割り込みを表現する。
皆に笑い飛ばされ追い払われる[p.65] 再び笑い声の動機
笑い声がおさまり、ダフニスとクロエは皆の前で抱き合う[p.65-66] 休止のフェルマータを挟んでロ長調に転調し、弦楽器がpppで「ダフニスの愛の主題」を奏で、第3場にも登場する動機(山口による「パン神の動機」)につながる。
群衆はクロエを連れて退場。ダフニスは恍惚として動かずにいる[p.66-67] 序奏の音楽が短縮されて再現される[225]
ダフニスは草の上に腰を下ろす[p.68] 舞台裏の合唱が「自然の主題」を奏でる。
リュセイオンの入場。リュセイオンはダフニスに近づき後ろから目隠しをする。ダフニスはクロエがふざけているものと勘違いする[p.69] クラリネットの二重奏による自由なカデンツァ[228]風のフレーズがリュセイオンを表現する。チェロのソロによる「ダフニスの愛の主題」を挟み、クラリネットのカデンツァ。
しかし、ダフニスはリュセイオンを認めると、彼女から離れようとする[p.70] 「ダフニスの踊り」が一瞬回想される[225]

リュセイオンは踊る。リュセイオンはわざとヴェールを1枚落とす[p.70-72]
リュセイオンの踊り》*
変ロ長調、8分の6拍子、ハープのアルペジオに乗り、フルートソロがリュセイオンの踊りを奏で[注 71]、クロタル、グロッケンシュピール、トライアングルが色を添える。
ダフニスはそれを拾い上げ、リュセイオンの肩にかける[p.72] 「ダフニスの踊り」が回想される。
リュセイオンはさらに気怠く、踊りを再開する[p.72] リュセイオンを表すクラリネット二重奏の後、フルートが踊りを続ける。
もう1枚のヴェールが地面に落ち、再びダフニスによって拾われる[p.75] 「ダフニスの踊り」が回想される。
困惑するダフニスをあざ笑うようにリュセイオンは退場する[p.75-76] クラリネットの二重奏がリュセイオンを表現する。
突如として、武器の音、戦の叫び声が近づいてくる。海賊が逃げる女性を追いかけている[p.76-77] コントラバスバスクラリネットのうねりを背景に、金管楽器に「海賊の主題」が出る。
ダフニスは、危険にさらされているであろうクロエを救うために急ぐ[p.76-77] 「ダフニスの愛の主題」と「海賊の主題」が重なる。
一方、クロエは必死になって隠れる場所を探している[p.79]。クロエはニンフの祭壇に飛び込み、加護を求めて祈る[p.79] ややテンポが上がり、木管楽器が「クロエの主題」を奏でる。次第にテンポが速まり切迫していく。
海賊の一団がクロエを発見し、彼女をさらう[p.81-82] 4本のトランペットfff のユニゾンで「海賊の主題」を鳴らす。
クロエを探すダフニスが入場。ダフニスは落とされたクロエのサンダルを発見する[p.82] 音楽は静まり、ppp となる。ティンパニが「変ホ」のロールを持続させる中、ヴィオラが「ダフニスの愛の主題」の断片を奏でる。
絶望したダフニスは、クロエを守ることができなかった神々を呪い、洞窟の入口で意識を失う[p.83] 突然、不協和音を伴う「ニンフたちの主題」が ff で出る。これが静まるとpで「ダフニスの愛の主題」の断片が繰り返され、音楽は静止する。

現実のものとは思えない光があたりを包み込む[p.84]
夜想曲》*
弱音器を付けた弦楽器がppp でトリルを持続させる。
※「第1組曲」はこの部分から始まる。
突然、ニンフの彫像の頭部に小さな火がともる。第1のニンフが台座から降りてくる[p.84] フルートが「ニンフたちの主題」をカデンツァ風に奏る。
第2のニンフが降りてくる[p.85] ホルンが「ニンフたちの主題」をカデンツァ風に奏でる。
第3のニンフが降りてくる[p.85] クラリネットが「ニンフたちの主題」をカデンツァ風に奏でる。
三人のニンフは話し合い[p.86] エオリフォンがここではじめて登場する。風の音を背景として管楽器が「自然の主題」を奏でる。
ゆっくりと、神秘的な踊りを始める[p.87] 変イ長調、8分の6拍子。フルート3本とアルトフルートが神秘的な踊りの音楽を奏で、旋律はクラリネットとオーボエによる「ニンフたちの主題」を経て弦楽器に移る。
ニンフらはダフニスに気づく[p.91]。ニンフは身を屈め、ダフニスの涙を拭う[p.92] エオリフォンの風の音や弦楽器のハーモニクスによるグリッサンドを背景に、フルートとハープが「ニンフたちの主題」を奏でる。
ニンフらはダフニスを蘇生させると、彼をパン神に形が似た岩に導く[p.93] クラリネットとヴィオラが「ダフニスの愛の主題」を奏でる。
ニンフらはパン神を呼び出す[p.93] エオリフォンの風の音や弦楽器のトリルを背景に、ニンフの踊りの旋律が奏でられる。
岩が徐々に神の姿になっていく[p.94] ppp のバスドラムのロールを背景に弦楽器のトリルが上昇していく。
ダフニスはひれ伏し、パン神に祈る[p.95] 打楽器のロールや弦楽器のトリルが一瞬音量を膨らませ、すぐに消えていく。
全てが消える[p.96] フェルマータのついた休符
間奏曲》*
合唱のアカペラ。背景となるシンコペーションの動きは「自然の主題」によるもの[251]
遠くでラッパの信号。声が迫っている[p.97] 合唱に乗り、舞台裏のトランペットとホルンが『海賊の主題』を奏でるが、その音は次第に近づいてくるように指示されている。切れ目なく第2場に入る。

第2場

ト書き 音楽
切り立つ岩に囲まれた海岸。海賊の野営地である。背景には海。戦利品を運ぶ海賊たちとガレー船が見える。舞台は松明で激しく照らされる[p.98] 第1部から続く合唱に、弦楽器の半音階の動きやバスドラムのロールなどが加わってクレッシェンドし、切れ目なく《戦いの踊り》に突入する。
戦いの踊り》*
4分の2拍子、アレクサンドル・ボロディンの『イーゴリ公』(ポロヴェッツ人の踊り)を連想する野生的な[251]海賊たちの踊りが展開する。「海賊の主題」が絡み、途中からは男声も加わる。転調を繰り返して最後はロ長調の主和音で一旦終始する。
※「第1組曲」はここで終わる。なお、クロタルはこの踊り以降使われない。
海賊の首領ブリュアクシスは捕虜を連れてくるよう命ずる[p.150]
手を縛られたクロエが二人の海賊に引きずられてくる[p.150] ハープのグリッサンドを背景に、弦楽器が「クロエの主題」を奏でる。
海賊の首領ブリュアクシスはクロエに踊りを命じる[p.151]
クロエの哀願の踊り[p.153] クロエの哀願の踊り
ロ長調、4分の3拍子。奇数小節が「4分音符=100」、偶数小節が「4分音符=72」の指定があり1小節ごとにテンポが変わる。このようなテンポの指示はラヴェルのスコアでは珍しい[215]。揺らぐテンポに乗り、コーラングレが「とても感情を込めて」旋律を奏でる。
クロエは隙を見て逃げようとする[p.157] 上行するハープのグリッサンドと木管楽器のパッセージ。
海賊たちは力づくでクロエを戻す[p.158] アクセントのついたトロンボーンや低音楽器の動き。
絶望的なクロエは、踊りを再開する[p.158] 変イ長調に転調し、踊りが再開する。コーラングレの旋律は消え、伴奏であった音形が前面に出て ff まで高まる。
もう一度、クロエは逃げようとするが[p.162] 上行するハープのグリッサンドと木管楽器のパッセージ。
彼女は再び戻される[p.162] アクセントのついたトロンボーンや低音楽器の動き。
クロエは絶望し、ダフニスのことを考えている[p.163] ロ長調。レント。コーラングレの節が「ダフニスの愛の主題」につながる。
ブリュアクシスはクロエを引き寄せようとする。クロエは懇願する[p.165] 変イ長調、海賊とクロエのやり取りが表現され、テンポはどんどん速くなる。
ブリュアクシスは勝利を勝ち取る[p.169] トランペット4本が ff で「海賊の主題」を吹奏する。
突然、あたりは不思議な要素で満たされる[p.170] ハ長調、突然のpp。コントラバスの「ハ」音のトリルの上にホルンが「変ト」音の伸ばし。ハープのグリッサンドが間歇的に聴かれる。
見えざる手により、小さな火がともされる[p.173] エオリフォンによる一陣の風。
不思議な生き物があたりを跳ね回る[p.175]。恐怖は徐々に野営地全体に広がる。サテュロスの集団が四方から海賊をとり囲む[p.177] 管楽器に軽快な動機が登場し、次第に楽器の数が増えクレッシェンドする。なお、シロフォンはこの場面の音楽のみに使われる。
大地が割れ、パン神の巨大な影が背景の山に映り海賊たちを脅かす。海賊たちは恐怖にかられて逃げ出す[p.180-181] 突然音楽が切り替わり、バスドラムのロールなどがクレッシェンドし、fff の頂点で銅鑼やエオリフォンが鳴る。低音の「ハ」音上の和音と中音部の「嬰ヘ」音が持続する中、弦楽器がグリッサンドを繰り返しながら音楽は次第に静まって行き、切れ目なく第3場に入る。

第3場

ト書き 音楽
舞台は夜明け前の第1部の風景に置き換えられる[p.182] 合唱が「嬰ヘ」音をホルンから引き継ぎ、音楽は次第に収まっていく。

岩肌から流れ落ちる露が集まってできた小川のせせらぎの他、何も聞こえない。ダフニスはまだニンフの洞窟の前に横たわっている[p.184-185]
夜明け》*
ニ長調、4分の3拍子。pp でフルートとクラリネットが交互に12連符のアルペジオを、ハープがグリッサンドを奏で、途中からはチェレスタも加わる。チェロとコントラバスは先頭の奏者から順に弱音器を外すよう指示されている。
※「第2組曲」はこの部分からバレエの最後までを抜き出している。
徐々に空が白みはじめ、鳥の歌が聞こえる[p.187-188] ヴァイオリン、ピッコロ、フルートが鳥の鳴き声を表現する。
ヴィオラとクラリネットが、夜明けを表す旋律を奏でる。
羊飼いと羊の群れが一緒に遠くを通り過ぎる[p.196] 舞台上のピッコロが羊飼いの笛を表現する。
別の羊飼いが舞台の奥を横切って行く[p.199] 舞台上の小クラリネットが羊飼いの笛を表現する。
ヴァイオリンが夜明けを示す旋律を奏で、舞台裏の合唱による「自然の主題」がこれに絡む。
ダフニスとクロエを探す羊飼いたちが入場する。彼らはダフニスを発見し、彼を目覚めさせる[p.206-208]
ダフニスは不安に駆られ、クロエの姿を探す[p.209] 音価を縮小した「クロエの主題」がダフニスの不安を表現する。
羊飼いに囲まれてクロエが登場する[274] 木管楽器と弦楽器が上行し、1小節のうちに p から f へと急速にクレッシェンドする。
ダフニスとクロエはお互いの腕の中に身を投じる[275] f かつ感情が込められた(très sxpressif)「ダフニスの愛の主題」。
ダフニスはクロエの頭の冠を見る[注 72]。彼の夢は預言的な幻想であり[注 73]、パン神が介入したことは明らかだ[p.213-214] 息の長いクレッシェンドで ff のクライマックスへ導く。頂点で「自然の主題」が合唱に出る。また、頂点でヴァイオリンなどが奏でる動機は、山口によるところの「パン神の動機」であり[278]、この動機が繰り返されながら音楽は静まっていく。
老いた山羊飼いのラモンが登場し、パン神がシリンクスとの過ぎし日の思い出ゆえにクロエを助けたのだと説明する[p.222]。ダフニスとクロエは、パンとシリンクスのアバンチュールを(パントマイムにより)再現する[p.223] オーボエがラモンを表す新しい旋律を奏でる。その下の音域ではクラリネットが「パン神の動機」を継続している。

クロエは草原でさまよう若いニンフ(シリンクス)を演じている[p.224]
無言劇》*[注 74]
2本のオーボエとコーラングレが新しい旋律を奏でる。
ダフニスが演じるパン神はニンフへの愛を告白する[p.225] オーボエのフレーズを弦楽器が受ける。
ニンフはパン神を拒む。神はさらにしつこく迫る[p.225-226] オーボエが下降する動機を奏でる。山口によればこの動機は「シリンクスの拒絶」を表している[278]
ニンフは葦の中で姿を消す[p.226] クラリネットによる「シリンクスの拒絶」の動機に、オーボエの上昇しながらデクレッシェンドするアルペジオが続く。
絶望的したパン神は葦の茎を折ってフルートを作り、メランコリックな曲を奏でる[p.227] 弦楽器が f でパン神の絶望を表現する。嬰ヘ短調(イ長調の平行調)に転調すると、弦楽器のピチカートとハープがリズムを刻み始める。
クロエが再び現れ、踊りによってフルートの抑揚を表現する[p.228] 伴奏に乗り長いフルートソロが始まる。途中で嬰ヘ長調に転調し、第2フルートやピッコロも交え、次第に高まっていく。
踊りはより活気を増していき[p.242] テンポをさらに速め、ff の頂点に昇り詰めて行く。
クロエは大きく身体をひねり、ダフニスの腕の中に落ちる[p.243] イ長調の4オクターブに及ぶ下降音階が、ピッコロから1番フルート、2番フルート、アルトフルートに一気にリレーされ、その最後の音が「ダフニスの愛の主題」につながる。
ロ長調に転調し、「ダフニスの愛の主題」が繰り返される。無伴奏ヴァイオリンソロが「シリンクスの拒絶」の動機を奏でるが、下降する動機は途中から上昇に転じ、ハープのグリッサンドを伴ってロ長調の主和音に溶け込んでいく。
ニンフの祭壇の前で、ダフニスとクロエは二頭の羊を捧げ信仰を誓う[p.250] バレエ全曲の冒頭と同じイ長調に戻り、「ニンフたちの主題」と「自然の主題」がf で同時に出る(序奏の変形された再現)。
バッカスの巫女の衣裳をつけた娘たちがタンバリンを振りながら入場する[p.251] 突然、「4分音符=168」の急速なテンポになり、4分の5拍子による バッカナール(フランス語版)が予告される。
ダフニスとクロエは優しく抱擁する[p.253] 一瞬テンポをゆるめ、アルトフルートとヴァイオリンが「ダフニスの愛の主題」の一節を奏でる。
若者たちのグループが乱入する[p.253]。幸せな大騒ぎ[p.254] 再び急速なテンポの4分の5拍子。全曲で初めてカスタネットの出番となる。スネアドラムがバッカナールのリズムを刻み、4分の2拍子を挟んで一旦ff の頂点を作るが、下降する半音階とともに一旦おさまる。弱音器をつけたトランペット、ホルンが三連符を刻むと、そのまま《全員の踊り》になだれ込む。

全員の踊り[p.258]
全員の踊り[注 75]
イ長調。4分の5拍子のリズムに乗り、小クラリネットが主題を奏でトランペットがこれに加わる。音楽は様々なエピソードを経ながら盛り上がっていく。
ダフニスとクロエ[p.270] 5拍子のリズムに乗り「クロエの主題」が回想される。
ドルコン[p.274] 「ドルコンのグロテスクな踊り」の一節が回想される。
3拍子のヘミオラで「ダフニスの愛の主題」が回想されfff の頂点を迎える。いったん静まってから再び4分の5拍子となり、合唱も加わって、喜びにあふれ興奮したフィナーレへと導かれる[296]